最終更新日 2026年7月28日 by amelie
はじめまして、西村亮太と申します。
新卒で住宅設備メーカーに入り、7年ほど営業をしていました。
その後、人材紹介会社でエネルギーや建設分野を担当するキャリアアドバイザーを6年。
今は独立して、採用に関する記事を書きながら、個人の方のキャリア相談を受けています。
こんな仕事をしていますが、私自身、転職で派手に失敗したことがあります。
2社目です。
求人票に書いてあった月給と、休日数と、なんとなく明るそうな社内写真。
その3つで決めました。
入ってみたら、想像していた仕事とは違う業務が半分以上を占めていて、1年半で辞めました。
今になって思うのは、あの求人票に嘘は書かれていなかったということです。
書いていないことが、あまりにも多かっただけでした。
この記事では、採用ページや求人票を見たときに「ここは自分で確かめておいたほうがいい」というポイントを5つに分けてお伝えします。
特定の会社を持ち上げたり、逆に警戒を煽ったりするつもりはありません。
判断するのはあなたなので、その材料の集め方だけをお渡しします。
説明が抽象的にならないよう、途中で実在する会社の採用ページを例に使わせてもらいます。
太陽光発電システムや住宅設備を扱う株式会社エスコシステムズという会社です。
特に問題があるから選んだわけではなく、中堅規模の企業として情報の出し方が標準的で、例として分かりやすかったからです。
Contents
そもそも採用ページには、何が書かれているのか
見方の話に入る前に、前提を1つだけ共有させてください。
求人票に書かれている項目は、実は会社が自由に決めているわけではありません。
法律で「これは必ず明示しなさい」と決まっている項目があります。
明示が義務づけられている労働条件
労働者を雇い入れるとき、企業が明示しなければならない労働条件は法令で定められています。
主なものを挙げると、こうなります。
- 労働契約の期間
- 就業の場所と、従事すべき業務の内容
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
さらに2024年4月からルールが追加されました。
厚生労働省の有期契約労働者の無期転換サイトによると、すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、就業場所と業務内容の「変更の範囲」まで明示することが必要になっています。
「変更の範囲」というのは、入社直後の配属先だけでなく、その後の配置転換で変わりうる範囲のことです。
出張のような一時的な移動は含まれません。
有期契約の方については、更新回数や通算契約期間の上限、無期転換の申込機会などについても明示対象が広がりました。
裏を返せば、それ以外は書かなくてもいい
ここが大事なところです。
法律が求めているのは、あくまで「この項目は明示しなさい」という最低ラインです。
逆に言うと、それ以外の情報は、書いても書かなくてもいいことになります。
離職率。
平均勤続年数。
有給休暇の取得日数。
入社3年後に何人残っているか。
こうした情報を載せていない会社は山ほどありますが、それは違法でも不誠実でもありません。
単に、義務がないだけです。
だから「載っていないから怪しい」と考えるのは早計ですし、逆に「書いてあることが全部だ」と考えるのも危ないわけです。
ここを出発点にして、5つの見方をお話しします。
見方1:給与は「総額」ではなく「内訳」で読む
求人票を開いて最初に見るのは、たいてい給与欄だと思います。
私も相談を受けるとき、まずここを一緒に読みます。
ただし、見るのは金額の大きさではありません。
内訳です。
固定残業代が何時間分含まれているか
月給の表記には、固定残業代(みなし残業代)が含まれていることがよくあります。
このとき確認したいのは、それが何時間分なのかという点です。
例を挙げます。
先ほど触れたエスコシステムズの採用ページに掲載されている東京勤務の営業職の求人では、月給の内訳がこう記載されています。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本給 | 18万円 |
| 固定残業代(43時間分) | 6万7,000円 |
| 地域手当 | 3万円 |
| 能力給 | 3,000円 |
この会社の名誉のために書いておくと、ここまで細かく内訳を出している求人票は、決して多くありません。
むしろ「月給28万円以上(固定残業代含む)」とだけ書いて済ませる会社のほうが世の中には多いです。
内訳が開示されている時点で、読者としては判断材料が増えています。
そのうえで、この数字をどう読むか。
43時間分の固定残業代が設定されているということは、月43時間までの残業は追加支給されない設計だということです。
同じ求人票には月平均残業14.4時間という数字も併記されていますから、実態としては固定残業の枠を大きく下回っている、という読み方になります。
ここで確認したいのは、次のようなことです。
- 固定残業時間を超えた分は別途支給されると明記されているか
- 実際の平均残業時間が併記されているか
- 基本給がいくらなのか(賞与や退職金の算定基礎になることが多いため)
3つ目は見落としやすいので、特に意識してみてください。
月給の総額が同じでも、基本給18万円の会社と基本給25万円の会社では、賞与の出方が変わる可能性があります。
試用期間中の条件は、別建てになっていることが多い
もう1つ。
試用期間中の待遇が本採用後と違うケースは珍しくありません。
先ほどの求人でも、試用期間(1〜3ヶ月)中は月給26万円でインセンティブの支給対象外、という条件が明記されています。
これ自体は一般的な設計です。
ただ、求人票の目立つ位置にある金額だけを見て生活設計を立てると、最初の数ヶ月で計算が狂います。
入社直後の手取りがいくらになるのか、必ず自分で計算してから応募することをおすすめします。
見方2:数字には必ず「基準日」と「出どころ」がある
これは私がキャリアアドバイザー時代に、いちばん多く指摘していたことかもしれません。
会社が出す数字には、必ず「いつ時点の数字か」と「誰が数えた数字か」がセットで存在します。
この2つを確認する癖をつけると、情報の読み違いがかなり減ります。
同じ会社でも、媒体によって数字が違うことがある
例として、エスコシステムズの2つのページを並べてみます。
| 項目 | 採用ページ(HRMOS) | 公式サイトの会社概要 |
|---|---|---|
| 従業員数 | 88名(2024年10月現在) | 89名(2025年9月現在) |
| 売上高 | 26億円(2024年9月期)ほか記載あり | 記載なし |
| 資本金 | 記載なし | 記載なし |
従業員数が1名違いますが、これは矛盾ではありません。
基準日が約1年ずれているだけです。
こういう「ずれ」は、どの会社でも起こります。
採用ページの更新頻度と、公式サイトの会社概要の更新頻度が違うからです。
問題は、読む側が基準日を見ずに「88名の会社」と覚えてしまうことです。
1年前の数字なのか、直近の数字なのか。
それだけで、成長中の会社なのか縮小中の会社なのかという印象も変わってきます。
業績の数字は、単年ではなく並べて見る
同じ採用ページには、売上高の推移も掲載されています。
2022年9月期が25億円、2023年9月期が32億円、2024年9月期が26億円という数字です。
単年だけ切り取れば「26億円の会社」ですが、3期並べると前年から減っていることが分かります。
ここで「業績が落ちているから危ない」と短絡するのは、私はおすすめしません。
太陽光や住宅設備の業界は、補助金制度や電力の買取価格の改定で需要が大きく動きます。
1期の増減より、なぜ動いたのかを面接で聞くほうがはるかに有益です。
いずれにせよ、3期分の数字を自社の採用ページに載せている時点で、開示姿勢としては前向きなほうだと私は受け取ります。
好調な年だけを載せることもできたはずですから。
「平均」が誰の平均なのかを考える
平均年収、平均年齢、平均勤続年数。
どれも便利な数字ですが、母集団によって意味が変わります。
営業職でインセンティブ比率の高い会社の平均年収は、トップ層に引っ張られて上がりやすい傾向があります。
中央値と平均値では、印象がかなり違うことも珍しくありません。
会社が出している平均年収と、口コミサイトに載っている平均年収が食い違うのも、たいていは母集団と算定方法の違いによるものです。
どちらかが嘘をついているとは限りません。
見方3:書いていない項目にこそ、確認すべきことが隠れている
冒頭で、法定項目以外は書かなくてもいいという話をしました。
では、書かれていない項目のうち、何を確認すべきなのか。
実はここに、そのまま使える公的な物差しがあります。
若者雇用促進法が定める「3類型」を借りる
新卒者向けの求人については、若者雇用促進法によって企業に職場情報の提供義務があります。
厚生労働省の青少年雇用情報シートの書き方のポイントには、提供すべき情報が3つの類型で整理されています。
1つ目は、募集・採用に関する情報です。
- 過去3年間の新卒者等の採用者数と離職者数
- 採用者数の男女別人数
- 平均継続勤務年数
2つ目は、職業能力の開発・向上に関する取組です。
- 研修の有無と内容
- 自己啓発支援の有無と内容
- メンター制度の有無
- キャリアコンサルティング制度の有無と内容
- 社内検定等の制度の有無
3つ目は、職場への定着の促進に関する取組です。
- 前事業年度の月平均所定外労働時間
- 前事業年度の有給休暇の平均取得日数
- 育児休業取得者数と出産者数
- 役員および管理的地位にある者に占める女性の割合
この制度が対象としているのは新卒等の求人なので、中途採用の求人票にこれらが載っている必要はありません。
ただ、国が「これを開示すれば求職者のミスマッチが減る」と考えて選んだ項目だという点が重要です。
つまり中途で応募する側にとっても、この15項目前後はそのまま「聞くべきことリスト」として使えます。
同じ資料には算定方法まで書かれていて、たとえば有給休暇の平均取得日数は、労働者ごとの取得日数の合計を労働者数で割って算出する、と定義されています。
面接で「有給の平均取得日数って出されていますか」と聞いたときに、この定義を知っているかどうかで、返ってきた答えの精度が測れます。
実際に確認するときのチェックリスト
私が相談者に渡しているものを、そのまま載せておきます。
応募先の採用ページを開いて、当てはまるものにチェックを入れてみてください。
- 平均勤続年数、または平均継続勤務年数が書かれている
- 直近の離職者数、または定着率が書かれている
- 月平均の残業時間が書かれている
- 有給休暇の取得日数、または取得率が書かれている
- 研修制度の中身が具体的に書かれている(期間、内容、担当者)
- 昇給・昇格の基準が書かれている
- 転勤の有無、または就業場所の変更の範囲が書かれている
- 退職金制度の有無が書かれている
チェックが少ないから悪い会社、ということではありません。
チェックが入らなかった項目が、そのまま面接で聞くべき質問になる、という使い方をしてください。
見方4:公的なデータベースで裏を取る
会社が出している情報を、第三者の立場から確認できる仕組みが、実はいくつも公開されています。
しかも無料です。
私が実際に使っているものを表にまとめました。
| 使えるサイト | 確認できること | 運営 |
|---|---|---|
| 職場情報総合サイト しょくばらぼ | 残業時間、有給取得率、平均年齢、平均勤続年数、中途採用比率など | 厚生労働省 |
| 国税庁 法人番号公表サイト | 商号、本店所在地、13桁の法人番号(基本3情報) | 国税庁 |
| 建設業者・宅建業者等企業情報検索システム | 建設業許可の有無、許可番号、代表者名、所在地など | 国土交通省 |
しょくばらぼで横並びに比べる
しょくばらぼは、企業の職場情報を検索・比較できる厚生労働省のサイトです。
トップページによると、掲載企業数は148,206件(2026年7月1日時点)となっています。
ここに載っている数字は、企業が国の様式に沿って登録したものです。
自社の採用ページに載せる数字と違って、項目も算定方法も揃っているので、他社と横並びで比べられるのが強みです。
応募を検討している会社が掲載されていれば、まずここを見てください。
掲載されていない会社も多いので、その場合は面接での質問に回します。
法人番号公表サイトで実在と所在地を確認する
国税庁の法人番号公表サイトでは、商号・本店所在地・法人番号という基本3情報を無料で検索できます。
社名で検索すれば、その法人が実在するか、登記上の所在地が採用ページの記載と一致しているかが数分で分かります。
本店の移転履歴も確認できるので、拠点が短期間で何度も動いていないかといった点も見られます。
許認可番号を照合してみる
これは業種によりますが、建設業や電気工事業のように許認可が必要な事業の場合、その番号が公開情報と一致するかを確認できます。
たとえばエスコシステムズは、公式サイトの会社概要に電気工事事業者登録番号や一般建設業の東京都知事許可番号を明記しています。
建設業許可については、国土交通省の検索システムで許可業者を照会できるようになっています。
許認可番号を自社サイトに明記している会社は、照合されることを前提にしているということです。
逆に、許認可が必要な業種なのに番号がどこにも見当たらない場合は、面接で聞いてみる価値があります。
見方5:同じ会社を、複数の媒体で見比べる
最後の見方です。
これがいちばん手軽で、いちばん効きます。
1つの会社の情報は、たいてい複数の場所に散らばっています。
- 自社の採用サイト
- 採用管理システム上の企業ページ(HRMOSやWantedlyなど)
- 大手転職サイトの掲載ページ
- 口コミサイト
- 会社の公式サイト(IR、ニュースリリース)
この5つを開いて並べると、面白いことが起きます。
書いてある内容が、微妙に違うのです。
情報の粒度が場所によって違う
たとえばエスコシステムズの場合、自社の採用サイトには平均年収や「転勤なし」といった大枠の情報が載っている一方、給与の内訳や勤務時間、休日の詳細は採用管理システム側の求人ページに集約されています。
これはよくある設計です。
自社サイトは会社の雰囲気やメッセージを伝える場所、求人ページは労働条件を正確に伝える場所、という役割分担になっているわけです。
ですから、自社の採用サイトだけを見て「情報が少ない会社だ」と判断すると、判断材料を半分捨てることになります。
条件面の詳細は、エスコシステムズの中途採用ページのように求人票が集約されている場所まで見に行ってください。
数字が食い違っていたら、どちらかを信じるのではなく質問する
複数の媒体を見比べると、年間休日数や従業員数のような基本的な数字が食い違っているケースに出くわします。
このとき、どちらが正しいかを推測しても意味がありません。
更新時期の違いなのか、算定方法の違いなのか、外からは分からないからです。
私が相談者に伝えているのは、「食い違いを見つけたら、それを質問リストに移す」ということです。
面接でこう聞けば済みます。
「求人票では年間休日113日と拝見しましたが、別の媒体では違う数字を見かけました。直近の実績としてはどのくらいでしょうか」
嫌な顔をされる質問ではありません。
むしろ、条件をきちんと確認する人だという印象になります。
口コミサイトの扱い方
口コミサイトについても触れておきます。
結論から言うと、私は読みますが、そのまま信じません。
理由は3つあります。
- 投稿者は退職者に偏りやすい
- 投稿時点の情報であり、組織が変わっていることがある
- 部署や職種によって体感がまったく違う
読むときは、評価点そのものより「どの部署の、いつの、どんな立場の人が書いたか」を見てください。
そのうえで、同じ指摘が複数の投稿に繰り返し出てくるなら、面接で確認するテーマとして拾う。
この使い方が現実的だと思っています。
それでも分からないことは、面接で聞いていい
ここまで5つの見方をお伝えしてきましたが、外部から確認できることには限界があります。
最後は聞くしかありません。
「聞いたら印象が悪くなるのでは」という相談をよく受けます。
私の実感では、聞き方さえ整っていれば、まず問題になりません。
そのまま使える言い方をいくつか置いておきます。
- 「求人票の月平均残業時間を拝見しました。繁忙期はどのくらいまで増えることがありますか」
- 「同じ職種で入社された方は、直近1年で何名くらいいらっしゃいますか」
- 「有給休暇の取得日数について、社内で数字を出されていれば教えていただけますか」
- 「試用期間終了の判断は、どんな基準で行われていますか」
- 「就業場所の変更の範囲について、実際に異動されるケースはどのくらいありますか」
いずれも、待遇を値切る質問ではなく、入社後の働き方を具体的に想像するための質問です。
そう伝わる聞き方をすれば、たいていの面接官は答えてくれます。
答えをはぐらかされたときは、その反応自体が情報になります。
入社後に「話が違う」と感じたときの窓口
万が一、入社してから求人票の内容と実際の労働条件が違っていた場合、相談できる窓口があります。
厚生労働省のハローワークの求人内容と実際の労働条件の相違に係る申出等によると、令和6年度の申出件数は3,297件でした。
令和5年度は3,761件、令和4年度は3,890件ですから、件数としては年々減ってきています。
窓口は、ハローワーク求人ホットライン(03-6858-8609)です。
受付時間は8時30分から17時15分まで、土日祝も受け付けています(年末年始を除く)。
年間3,000件を超えているという事実は、求人票と実態のずれが現実に起きていることを示しています。
同時に、こういう仕組みが用意されていることも知っておいてください。
泣き寝入りする必要はありません。
まとめ
5つの見方を、あらためて整理します。
- 給与は総額ではなく内訳で読む。固定残業代が何時間分か、試用期間中の条件はどうかを確認する
- 数字には基準日と出どころがある。いつ時点の、誰が数えた数字かを必ず見る
- 書かれていない項目を洗い出し、そのまま面接の質問リストにする
- しょくばらぼや法人番号公表サイトなど、公的なデータベースで裏を取る
- 同じ会社を複数の媒体で見比べ、食い違いを見つけたら質問に回す
どれも、10分あればできることばかりです。
冒頭でお話しした私の2社目の失敗は、この10分を惜しんだ結果でした。
求人票に書かれていなかったことを、書かれていないまま受け入れてしまったわけです。
採用ページは、会社が自分たちを紹介する場所です。
良いところが前に出るのは当たり前ですし、それを責めるのは筋違いだと思います。
だからこそ、足りない部分は自分で埋めにいく。
その手間をかけた人ほど、入社後に「思っていた通りだった」と言える確率が上がります。
あなたの転職が、確かめたうえでの選択になることを願っています。
