子供が矯正を嫌がる時は?歯科医で母の私が実践した【やる気アップ術】

最終更新日 2025年12月25日 by amelie

「子どもの将来のために」と一大決心して始めたはずの歯列矯正。
それなのに、当の本人は「痛い!」「面倒くさい!」「もうやめたい!」の大合唱…。

日に日に増していく子どもの不満と、それにどう応えればいいのか分からない親御さんの焦り。
歯科医院の診療室では、そんな親子のつらい場面を何度も目にしてきました。

何を隠そう、私自身も歯科医師であると同時に、現在進行形で息子の矯正治療と向き合う一人の母親です。
専門家として頭では分かっていても、我が子の「嫌だ!」という涙を前にすると、心が揺れてしまう気持ち、痛いほどよく分かります。

この記事では、そんな「歯科医」と「母」という二つの視点から、お子さんが矯正治療を前向きに乗り越えるための具体的な「やる気アップ術」を余すところなくお伝えします。
長い治療期間を、親子にとって「辛いだけの時間」から「共に成長できる貴重な時間」に変えるためのヒントが、きっと見つかるはずです。

参考: 「プレオルソこども歯ならび矯正法」は、3〜10歳ごろのお子様のためのマウスピース型の矯正方法です

Contents

なぜ?子供が歯科矯正を「嫌だ!」と感じる5つの本当の理由

お子さんの「やる気スイッチ」を入れるためには、まず「なぜ嫌がっているのか」その根本原因を理解することが不可欠です。
大人が思う以上に、子供たちは様々な不安やストレスを抱えています。

理由1:痛みや違和感への「未知の恐怖」

子どもが矯正を嫌がる最も大きな理由の一つが、痛みや違和感です。
特に装置をつけ始めたばかりの頃や、調整した後の2〜3日は、歯が浮くような、締め付けられるような痛みを感じやすい時期です。
また、装置が頬の内側や舌に当たって口内炎ができることもあります。

大人であれば「歯が動いている証拠だ」と理解できても、子どもにとっては「いつまで続くか分からない不快感」であり、未知の恐怖に他なりません。

理由2:「見た目」が気になるお年頃のプライド

学校生活が世界の中心である子どもたちにとって、友達からどう見られるかは非常に重要な問題です。
「装置が目立って恥ずかしい」「からかわれるかもしれない」といった不安は、特に思春期に差し掛かるお子さんにとっては深刻な悩みです。

ワイヤー装置の金属色が気になったり、取り外し式の装置を友達の前で着脱することに抵抗を感じたりと、見た目に関するストレスが治療への拒否感に繋がるケースは少なくありません。

理由3:大好きなものが食べられない「食事のストレス」

矯正治療中は、食事に様々な制限がかかります。
硬いおせんべいやリンゴの丸かじり、粘着性のあるキャラメルやガムなどは、装置の破損や脱落の原因になるため避けなければなりません。

大好きなおやつが食べられない、給食でみんなと同じものが食べにくいといった毎日の小さな我慢が積み重なり、子どもにとっては大きなストレスとなります。

理由4:「面倒くさい」が勝ってしまう毎日の歯磨き

矯正装置がつくと、歯磨きが格段に難しくなります。
装置の周りには食べかすが詰まりやすく、普段より丁寧に時間をかけて磨かなければ虫歯のリスクが高まります。

ただでさえ歯磨きが苦手なお子さんにとって、この「面倒くささ」は大きな壁です。
特に、マウスピース型矯正の場合は食事のたびに装置を外して洗浄し、歯磨きをしてから再装着するという手間がかかるため、負担に感じてしまうことがあります。

理由5:いつまで続くの?「ゴールの見えない不安」

小児矯正は、年単位の長い期間がかかる治療です。
大人と違って、子どもは「将来のきれいな歯並びのため」という長期的なメリットを具体的に想像するのが苦手です。

「あとどれくらい頑張ればいいの?」というゴールの見えない状況は、モチベーションを維持する上で大きな障壁となります。
親が「あなたのため」と言っても、子ども自身が治療の必要性を実感できていないと、「やらされている」という不満だけが募ってしまいます。

【歯科医ママ実践】子供のやる気を引き出す7つの魔法のスイッチ

お子さんが嫌がる理由が分かったら、次はいよいよ「やる気スイッチ」を押すための具体的なアプローチです。
我が家でも効果があった、歯科医ママおすすめの7つの方法をご紹介します。

スイッチ1:「やらされる治療」から「自分のための治療」へ意識を変える

最も大切なのは、お子さん自身が「これは自分のためにやっているんだ」と主体的に捉えることです。
そのためには、まず親子で「なぜ矯正が必要なのか」をしっかりと話し合いましょう。

会話のヒント
「もし歯並びがきれいになったら、どんな良いことがあると思う?」
「しっかり噛めるようになると、大好きなスポーツももっと上手になるかもしれないよ」
「大人になった時、虫歯で困ることが少なくなるんだって」

ただ親が説明するだけでなく、お子さん自身の言葉でメリットを言えるように導いてあげることがポイントです。
歯科医院で治療前後のシミュレーション画像を見せてもらうのも、目的意識を持つために非常に効果的です。

スイッチ2:「未来の素敵な自分」を具体的にイメージさせる

長期的な目標が苦手な子どもには、具体的でワクワクするような未来をイメージさせることが有効です。

例えば、お子さんの好きなアイドルやスポーツ選手、アニメのキャラクターなどを引き合いに出し、「〇〇さんみたいに、素敵な笑顔になれるといいね!」と話してみましょう。
矯正治療が「カッコ悪いもの」ではなく、「憧れの存在に近づくためのステップ」だと認識できれば、見る目が変わってきます。

スイッチ3:小さな「できた!」を見つけて褒める&ご褒美作戦

長い治療期間を乗り切るには、短期的な目標設定と達成感が不可欠です。

目標設定の例ご褒美の例
1週間、忘れずに装置をつけられた好きなキャラクターのシールをカレンダーに貼る
調整後の痛みを3日間乗り越えられた週末に好きなデザートを食べる
1ヶ月、頑張って通院できた新しい文房具を買う
歯磨きを上手にできた歯科医院で褒めてもらい、ガチャガチャをさせてもらう

ポイントは、「頑張ったらご褒美」というポジティブなサイクルを作ることです。
「ごほうびシート」やスタンプカードを作り、努力を”見える化”するのもおすすめです。

スイッチ4:矯正期間を「親子で乗り越えるイベント」にする

矯正治療は、お子さん一人で頑張るものではありません。
「お母さん(お父さん)も一緒に頑張るからね」という姿勢を見せることが、お子さんにとって何よりの支えになります。

例えば、

  • 通院日は「親子デートの日」と決めて、帰りに少し寄り道をする
  • 矯正ノートを一緒につけて、頑張りを記録する
  • 食事のメニューを一緒に考える

このように、矯正を親子共通のプロジェクトと捉えることで、孤独感が和らぎ、連帯感が生まれます。

スイッチ5:ケアグッズを「選ぶ楽しさ」に変える

毎日の面倒な歯磨きも、少しの工夫で楽しい時間に変えられます。
お子さんと一緒にデンタルグッズを選びに行き、好きなキャラクターや色の歯ブラシ、好きな味の歯磨き粉などを選ばせてあげましょう。

おすすめケアグッズ

  • ワンタフトブラシ: 装置の周りなど、細かい部分を磨くのに便利です。
  • 歯間ブラシ: ワイヤーの下など、歯ブラシが届きにくい場所の清掃に使います。
  • フッ素配合の洗口液: 歯磨きの仕上げに使うことで、虫歯予防効果を高めます。

自分で選んだお気に入りのグッズを使うことで、歯磨きへの抵抗感を減らすことができます。

スイッチ6:食事の工夫で「食べられない」を「これなら食べられる!」へ

「あれもダメ、これもダメ」と禁止するばかりでは、食事の時間が苦痛になってしまいます。
発想を転換し、「どうすれば食べられるか」を一緒に考えましょう。

避けたい食べ物工夫のポイント
硬いお肉、野菜細かく刻む、圧力鍋で柔らかく煮込む、ハンバーグやポタージュにする
リンゴ、ニンジン薄くスライスする、すりおろす、加熱して柔らかくする
麺類、繊維質の野菜短くカットして、装置に絡まりにくくする

調理法を工夫すれば、食べられるものの幅は大きく広がります。
お子さんの好きなメニューを矯正仕様にアレンジして、「これなら美味しく食べられるね!」という成功体験を増やしてあげましょう。

スイッチ7:「一番の味方」は歯科医師と歯科衛生士だと伝える

痛みや不安がある時、親に言えないことでも、専門家である歯科医師や歯科衛生士になら話せることもあります。
「先生や衛生士さんは、〇〇くん(ちゃん)が頑張っているのを一番よく知っているよ」「困ったことがあったら、何でも先生に相談しようね」と伝え、歯科医院が「怒られる場所」ではなく「助けてくれる場所」であることを教えてあげましょう。

定期的な通院の際に、専門家から「すごくきれいになってきたね!」「歯磨き上手だね!」と具体的に褒めてもらうことは、親が褒めるのとはまた違った効果があり、モチベーションアップに繋がります。

ケース別!こんな「嫌だ!」にはこう対処する【実践編】

頭では分かっていても、いざという時にはどう対応すれば良いか迷ってしまうものです。
よくある3つのケースについて、具体的な対処法を解説します。

ケース1:「痛くて嫌だ!」と泣きつかれたら

まず、「痛いよね、辛いよね」とお子さんの気持ちを全面的に受け止めてあげてください。
その上で、以下の対処法を試してみましょう。

  • 柔らかい食事を用意する: お粥やうどん、スープ、ヨーグルトなど、噛まなくても食べられるものを用意します。
  • 痛み止めを服用する: 痛みが強い場合は、我慢させずに歯科医院で処方された、あるいは市販の小児用鎮痛剤を服用させましょう。(必ず歯科医師に相談の上、用法用量を守ってください)
  • 矯正用ワックスを使う: 装置が口内炎の原因になっている場合は、装置の当たる部分を「矯正用ワックス」でカバーすると痛みが和らぎます。
  • 「痛いのは歯が動いている証拠だよ」と伝える: 痛みの理由を説明し、「あと2〜3日で楽になるからね」と見通しを伝えて安心させてあげましょう。

ケース2:「装置が恥ずかしい」と学校に行きたがらなくなったら

見た目を気にするお子さんの心は非常にデリケートです。
「気にしすぎだよ」と一蹴せず、まずはその気持ちに寄り添うことが大切です。

  • 目立たない装置について相談する: 現在では、従来の金属の装置以外にも、白いワイヤーや透明なブラケット、マウスピース型矯正装置など、目立ちにくい選択肢が増えています。 治療の選択肢について、かかりつけの歯科医師に相談してみましょう。
  • カラーゴムで楽しむ: ワイヤー装置の場合、ブラケットに装着するゴムを好きな色にできることがあります。ファッション感覚で色を選ばせてあげることで、ネガティブな印象をポジティブに変えるきっかけになります。
  • 同じ仲間を見つける: 学校の友達や、テレビに出ている有名人など、矯正をしている人を見つけて「みんな頑張っているんだよ」と伝えてあげると、孤独感が和らぎます。

ケース3:「もうやめたい!」と本気で訴えられたら

治療が長引くと、お子さんの心が折れそうになる時もあります。
そんな時は、一度立ち止まって、親子でじっくりと話す時間を作りましょう。

  • 何が一番つらいのかを聞く: 「やめたい」という言葉の裏にある、本当の理由(痛み、見た目、食事など)を優しく聞き出してあげてください。
  • これまでの頑張りを認める: 「今まで本当によく頑張ってきたね」と、これまでの努力を具体的に褒めてあげましょう。治療開始時と現在の歯並びの写真を比較して見せるのも効果的です。
  • 歯科医師に相談する: 親子だけで抱え込まず、かかりつけの歯科医師に相談しましょう。専門家の視点からアドバイスをもらったり、一時的に装置を調整して負担を減らすなどの対応を検討してもらえる場合があります。

無理やり続けさせるのは逆効果です。 お子さんの気持ちを尊重し、どうすれば乗り越えられるかを一緒に考える姿勢が大切です。

最後に、親として心掛けたい3つのこと

お子さんの矯正治療を成功に導く鍵は、親御さんのサポートにかかっています。
最後に、親として心に留めておいてほしい3つのことをお伝えします。

焦らない、叱らない、比べない

治療が計画通りに進まないと、つい焦って「なんでちゃんとやらないの!」と叱ってしまいがちです。
しかし、それではお子さんを追い詰めてしまうだけです。
また、「〇〇ちゃんはちゃんとできているのに」と他のお子さんと比べるのも絶対にやめましょう。
お子さん自身のペースを尊重し、長い目で見守ってあげてください。

まずは子供の「嫌だ」という気持ちを丸ごと受け止める

お子さんが「嫌だ」と言った時、すぐに「でも」「だって」と否定から入らないでください。
まずは「そっか、嫌なんだね」「痛いのは辛いよね」と、お子さんの気持ちをオウム返しするように受け止めてあげましょう。
自分の気持ちを理解してもらえたと感じるだけで、お子さんの心は少し軽くなります。

親も一緒に頑張る姿勢を見せる

矯正治療は、お子さんだけの課題ではありません。
食事の準備や毎日のケア、通院の付き添いなど、親御さんの協力が不可欠です。
「あなた一人で頑張りなさい」ではなく、「お母さん(お父さん)も一緒に頑張るよ」というメッセージを伝え続けてください。
その姿勢が、お子さんにとって何よりの励みになります。

まとめ

子どもの矯正治療は、決して平坦な道のりではありません。
しかし、お子さんがなぜ嫌がっているのかを理解し、適切なアプローチでやる気スイッチを押してあげることで、親子で乗り越えることは必ずできます。

この記事でご紹介した方法が、あなたの「困った」を「こうしてみよう!」に変えるきっかけになれば、歯科医として、そして同じ母として、これほど嬉しいことはありません。
長い治療期間の先にある、お子さんの健康で美しい笑顔を信じて、二人三脚で歩んでいきましょう。